本館古勢起屋

本館古勢起屋の歴史

現代に生きる、美しき「ジャパン デコ」

19世紀末から20世紀初頭にかけヨーロッパで盛んになった芸術運動アール ヌーボーに代わり、1920~30年代にフランスで発祥したアール デコは、それまでの華美な装飾を省いた商業デザインの先駆けともいえる様式でした。 シンメトリーで端正なアール デコのデザインは日本の建築にも大きな影響を与え、大正・昭和の戦前期には国内の職人達によって、この様式を和の感性で再構築したジャパン デコ、いわゆる<洋風の和館建築>が盛んに造られました。本館古勢起屋が建てられたのもその頃です。 当館は建物の特徴から、時代によって建て増しが行われ、1・2Fは大正期、3Fは昭和初期に造られたものだと推定されています。

先人たちの足跡

本館古勢起屋の館内にはロビーラウンジの柱でご覧いただける伝統工法の「木組み」をはじめ、建物を手掛けた職人たちが書いたと思われる建具の“覚え書き”など、長い歴史の足跡がそのまま残されています。木の表情をそのまま活かした曲がった梁や、細かなところに施された木彫装飾など、館内でご覧いただける歴史の物語をお楽しみください。

伝統木工技術「組子」

川側和室等に施された「組子」は、釘を使わずに木を幾何学的な文様に組み付ける日本古来の木工技術です。細くひき割った木に溝や穴、ほぞ加工を施し、カンナやノコギリ、ノミ等で調節しながらひとつずつ組み付ける繊細な手作業は少しの誤差も許されず、当時の職人たちの腕の見せどころでもありました。当館ではこの組子をはじめ、窓枠や天井など館内の随所にこの技法を応用した格子の意匠がございます。

独特の温かさが美しい「昔ガラス」

お部屋の窓をはじめ、室内に配したステンドグラスには懐かしい「昔ガラス」を使用しております。厚みが不均一で歪みのある昔ガラスは昭和初期から盛んに使用されるようになったガラスで、独特の味わいや“ゆがみ”が特長です。表面に霜が付いたような繊細な「結霜(けっそう)ガラス」や凹凸のある「ダイヤガラス」は、その美しく上品な佇まいが洋風の空間にもよく似合います。